Archive for 3月 3, 2006

綿棒

 最初に通ったのが、B先生。
温厚なお人柄そのものの診察で、看護師さんも手際が良くてきぱきと動いて衛生的にも問題はありませんでした。
 医院は推理小説に良く出てくるような木造の古い建物。待合室には薄暗い廊下が続き、奥にはかつて病室だったことをおもわせる使ってない部屋がいくつかありありました。待合室のドアをギーッと開くと、診察室。
 耳鼻科につきものなのが、子供の泣き声!お母さんと看護師さんにがっしりと抱えられた、鼓膜を突き破るような赤ちゃんの泣き声が待合室に響きます。永井一郎さんがお書きになった本の中に、オペラ歌手の声より赤ちゃんの声のほうが通るといったエピソードがあったのを思い出します。命の危険を知らせる唯一の方法が泣き声ですものね。そういえば声のこもった赤ちゃんなんて聞いたことありません。
 一時間ほど待つと名前を呼ばれます。
診察は昔ながらの方法でした。問診の後、のどを鏡で見て、病名を告げ、鋏の片側だけはずしたような器具の先に巻きつけた綿棒をルゴールの瓶に浸して、のどに塗ります。これを赤ちゃんにもやるのですから、鼓膜が破れるような声が出るのは当たり前です。飛び上がるような痛さです。
終わると、数分間吸入して薬をもらいます。薬は毎回同じ、抗生物質、痛み止め、炎症を抑える薬、そしてイソジンのうがい薬。看護婦さんから「次は何日に来てください」それと「お風呂はしばらく控えるように、辛いものは食べないように」と言われて、お金を払って帰ります。
 仕事を休めればいいのですが、当時は毎朝月曜日から金曜日まで生放送ナレーションの仕事があったので、そうもいかず、喉の快復も思うようになりませんでした。
数日後にまた診て貰い、ほぼ同じ処置、吸入して、薬を貰います。抗生物質を変えるだけであとは同じ、必ずイソジンのうがい薬がついてくるので、洗面所はイソジンだらけになりました。
 なんと言っても良い先生なので、ルゴールをゴシゴシ塗られた痛みも忘れて、真面目に通いました。
お風呂も控え、大好きな辛い食べ物も手をつけずに我慢しました。
 この頃は風邪をひきやすく、年に数回はお世話になった記憶があります。後に風邪をひきやすい理由が分かったのですが、この頃はひたすらB先生の言いつけを守っておりました。