Archive for 1月, 2004

パーティー

私たちが新人の頃は、先輩の芸を見て、盗んで仕事を覚えた。だから厳しい先輩にも優しい先輩にも頭が上がらない。こうした席で大先輩を前にすると、未だに米つきバッタ状態だ。頭を下げることでいろいろ教えて頂いたものだ。仕事の後の飲み会で、反省しながら先輩の話を聞いて勉強した。最近は声優学校出身の人や新劇団の人が増えたので、仕事場で先輩に芸を習うことが少なくなった。学校や劇団に先生や師匠がいるので、先輩へのスタジオでの対応も我々の時代とは変わって来た。私たちのように無条件で米つきバッタになる人はいない。緊張のあまり台詞が言えなくなる人も殆ど見かけない。仕事をする上では、やりやすくなったのだが、どこか寂しい気もする。

大御所が揃って壇上に上がった。
司会はロッキーの声やハリソンフォードの声の羽佐間さん。
よく考えると声優業界は、新陳代謝がない。サザエさんやドラえもんの出演者は30年も同じ人だ。サラリーマンなら定年退職と言うのがあるが、声の仕事はそれが無い。ジャイヤンのたてかべさんなんか還暦を過ぎているのにまだ小学生の役をやっている。逆にフネさん役の麻生美代子さんや、スクルージ役の北村弘一さんなどは20台の頃からお婆さんお爺さんの声をやっている。もちろん喉と身体の手入れは、並大抵ではないだろうが、私たちとの距離は永遠に縮まらない。

緊急事態

声が出ない!
朝起きたら、声が出ない。予感があったので夜寝る前にうがいと鼻洗浄をしたのだが、それが裏目に出た。鼻は無事だったが、炎症を起こしていた咽頭が、腫れ上がったようだ。声帯も腫れているかもしれない。すぐかかりつけの耳鼻科に。急性咽頭喉頭炎と診断され、いつものように鼻と喉を処置し吸入して、抗生剤と炎症止め咳止めを処方して貰った。
家に帰り、響声破笛丸を飲む。これは即効で、驚く。かなり良くなる。食事をして、先程の抗生剤他を飲む。これでぐっすり眠れば、良いのだが、夕方から仕事がある。他の人に代わって貰うべきか、悩むが、声を出してみると出る。念のため即効ドリンクも飲んで、時間まで静養することにした。
友人から「碁」の誘い。当然断るが、風邪をひいたと言うと「致命的だね」とぐさっと言われてしまった。昨年はついに風邪をひかなかった。今年も大丈夫だろうと過信してしまった。絶対あってはならない事だ。

この日の仕事は、ボイスオーバーナレーション。アメリカで制作されたスポーツドキュメントの、日本語版の仕事だ。かなりの量がある。前日夜VTRを見ながら原稿をチェックしたのだが、上手く合わないので時間まで再チェックすることにした。これがいけなかった。つい声を出してしまう。喉が焼けるように痛い。

スタジオについて、仲間から耳鼻科情報を聞く。「その日のうちに声が出る耳鼻科がある」という。山寺君や、著名な声楽家も行くと言う。この日の仕事は もし不都合があれば撮り直して貰う事で、とりあえず収録した。スタッフの方に迷惑をかけたが、無事終了。問題は翌日だ。16:00からアニメーション。レギュラー役ではないが、心配だ。経験から、この痛みでは、明日は厳しい。案の定朝起きたら、声がガラガラだ。重傷だ。響声破笛丸を飲むが、昨日ほどの効果は無い。こうなったら昨日の耳鼻科情報にかけてみるしかない。

朝一番で病院に。仕事柄耳鼻科には詳しい。行った耳鼻科は、東から西までその数20や30にはなる。どんな処置をするのかと興味津々。問診から喉を見て鼻を見る。喉の治療で鼻を見ない先生は、まずダメだ。次にファイバースコープで詳しく診察。ビデオをみながら説明してくれて、とても分かりやすいし。ファイバースコープを入れるのも上手で痛くない。で驚いたのが先生の言葉、「大丈夫です。すぐ声が出るようになりますよ」・・・みんなそう言うんだよね。そば屋の出前じゃないんだから。すぐというのは、どのくらいのすぐなのか一週間とかじゃ困るのよね・・「今日昼過ぎには声を出したいのですが?」と聞くと「大丈夫です」と先生。えっ!
静脈注射をして喉の炎症を抑えるのだそうだ。すると声帯に異常はないので、声は出るという。

確かに効果はあった。注射は痛いが、声が出るなら何本でもOKだ。

そして 鼻の治療。鼻にアレルギーがありそれを治さなければ、と言われる。鼻のアレルギーはもう治らないと諦めていたのに、「治ります」ときっぱり言われた。さすがにこれはすぐとは行かないようだが、でも明るい光が見えた。

耳鼻科は本当にピンキリだ。情報交換して良い病院を選びたい。ちなみに治療費は飲み薬5日分点鼻薬2種類とファイバーでとった声帯写真付きで\5160。
処方薬にステロイド系が多い気がするが、その日のうちに直して貰うのだから仕方ないか。

進化するアテレコ

進化するアテレコ
先月収録した日曜洋画劇場リーサルウエポンが放送された。

全編、磯部勉さんと池田勝さんのマシンガントーク。
舞台や映画などの俳優やスタッフの中には、一部馬鹿にする人もいるが、アテレコは、本当に難しい。理想を言えば、何日もスタジオを使って、リハーサルを重ね、台本を練り上げ、役者同士の息を合わせてから、収録すればいいに違いないが、そうはイカの筋肉マン。限られた時間の中で、いかに良いものを造るか。まず言葉の壁がある。文章は翻訳できても、生活習慣等に関わる微妙なニュアンスまでは、なかなか日本語に変換できない。違う言葉を話す俳優の口の動きに合わせなければならない。
草創期は 映画そのものが、のんびりしていた。台詞と台詞の間にたっぷり思入れの間があって、アップアップの切り返し、恋愛映画等でよくみる手法が多かった。だからだろうか、このころ活躍していた 先輩俳優は、美声の人ばかりだった。男性も女性も。情感あふれる台詞を、美しい響きの声で聞かせる、そんな時代だった。翻訳台本も日本語が少なめで、普通にしゃべると口が余ってしまう。所謂パクる。そのため、語尾を延ばし気味にする、これが「アテレコ口調」と呼ばれた。仕事は山のようにあり、タレントは少ないので、大忙しだったと聞く。
ところが、映画を創る機材や環境が、劇的に向上した最近は、ハリウッド映画の演出も演技も変わってきた。よりナチュラルになった。吹き替える立場で言えば、何人もの登場人物が同時に台詞を言うシーンが多くなった事だ。リーサルウエポンもそうだが、相手がまだ台詞を言い終わらないうちに、台詞が出る。テンポが速くなり台詞の量も増え、シーンの切り替えも早い。かつては、無理だった事が、簡単に出来るようになった。
しかしこれをアテレコするのは至難の業だ。そのせいか最近活躍している声優は、美声と言うより、強い声の人が多い。台詞のテンポが速くなってもはっきり聞き取れ、大音量のBGMに負けない声量が求められる。
吹き替えの録音設備も飛躍的に進化している。台詞を合わせる事は簡単に出来るようになったそうだが、やはり素晴らしいのは、吹き替えを担当する日本のスタッフ俳優達の技術だろう。個性あふれる俳優を自在に操るディレクター 4本のマイクで、俳優の癖に合わせオンオフをつける神業ミキサー、電話帳程の厚さにもなろうかという台本の翻訳者、声優スタッフ全員のチームワークで、正味9時間で収録を終えた。
ご覧になった方はどう思っただろうか・・

語りの会

「語り」「一人芝居」をいくつか見た。

「麦人独演」
水道橋「しろとくろと」
「アカシアの町」「タイチャン」
毎月第一土曜日ロングラン上演
声優としても大活躍の俳優「麦人」さんのライフワーク「独演」。生まれた時から「役者」、全てが舞台の為にあるかのような、豪快な日常生活。そんな麦人さんの情熱が、作品に、あふれている。
草野心平の蛙の詩を見事に演じた「ごびらっふの死」に始まり、自作「リュックサック」殿山泰司の自伝を脚色した「タイちゃん」パート1・2と続き、今回は新作「アカシアの町」。パート1・2を1本にまとめた新「タイちゃん」。休憩を挟んで、正味3時間の熱演は圧巻。同じ作品を何度も演じるうちに、練り込まれ、成熟していく。「舞台作品はお客が創るのだ」と言う事がよく分かる。完全一人称に脚色して、原作者を演じるスタイル。初演の時、素の表現者と原作者を演じる表現者が、何処で切り替わるかはっきりしない部分があった。これは明快になって分かりやすくなった。まだ見ていない人は是非。詳しい情報はホームページで。「リンク」のページから飛べます。
2本通しで4500円。

「池田昌子語りの会」
鎌倉「円覚寺」

佐江衆一 江戸職人奇譚より「一会の雪」「江戸の化粧師」
久々の鎌倉は雨模様。お堂に座布団を敷いて、座って見る。灯明に火を入れ、開幕。障子をガタゴト開けて、池田昌子さんが登場する。ご本尊に手を合わせ、こちら向きに座って、「語り」が始まる。台本を譜代に載せ、原作に忠実に語っていくスタイル。お客を直接見る事はない。美しい声の合間に漏れる息づかいから、星のかけらが、きらきら舞っているようだ。偏屈とも思える職人気質と、それに思いを寄せる女心を描いた作品だが、池田さんが描く女性は、どちらも美しい。あっという間の2時間だった。音楽は、生演奏。音楽そのものは素晴らしい。単独で聞いてみたい気がした。
3500円円覚寺拝観料込み

「山田レイコ一人会」
国立演芸場

太宰治「灯籠」杉本苑子「じじばばの記」
同じ劇団に所属していた山田さんが国立演芸場で「一人語り」を10年もやっていた。
一昨年「芸術祭」演芸部門で優秀賞を受賞し、徹子の部屋に出ていたのを見てそれを知った。現在は他の仕事をしながら、この会を続けているのだそうだ。日舞 ダンスなど稽古を重ね、それを生かした演出は見事で、芸術祭優秀賞を貰うだけのことはある。休憩を除いてほぼ2時間。振りで、老若男女を演じわける手法は、面白い。お客さんは毎回見ている人が多いようで、すっかり満足していた。「語り」ではなく「一人芝居」でもない、独特のスタイルだ。視覚に訴える演出は客を飽きさせない。
3000円

「あいうえおの会」加藤精三さん
お江戸日本橋亭
半村良「めぬけの芥子和え」
語りの発表会にゲスト出演。
十数年前に見て大感激した、加藤さんの「語り」。先日お会いした時は「もうやってない」と仰ってたが、運良く情報をキャッチ。加藤さんは仕事も厳しいが、「語り」の指導でも厳しいそうだ。まずお弟子さんが、稽古の成果を発表。お客と語り手の間に、台を置きその上に台本を立てるスタイル。無駄な動きはいっさい無い。台本を上手く利用している。そして「名人芸」加藤さん。こんなに笑ったのは久しぶりだ。落語に近いが、下手な噺家より面白い。声の仕事をやっている人が舞台に立つと、仕事での役が良くも悪くもダブルが、巨人の星のお父さんを思い出す人は誰もいない。ほぼ20分。他の作品も聞いてみたいです。是非お願いします。
1000円

「言音座」鎌田弥恵「物語の会」
内幸町ホール
佐江衆一 「一会の雪」
池田昌子さんの一本と同じ作品。同じピアノが演奏者で、全く違う音を出すように、「語り手」によって違う作品になる。台本を持たず、お客を見ながら、話を進めるスタイル。カーテンコールで仰っていたが、原作に相当手を加えるようだ。お客さんは大満足していた。照明が切り替わる時のモーター音が気になって、もったいない気がした。ファンとしては、「語り」だけで楽しみたい。
3500円

「語り」と言っても様々なスタイルがある。どれも全く違うが、お客さんは、楽しんでいる。「語り」の舞台で台本を持つ持たないは、暗記するかしないか以上の意味がある。

名人!!

久しぶりに末広亭に行った。落語芸術協会の担当で昼の部の主任は桂文治。中入り前に春風亭柳昇。客が一人だけだったらどうしようと、妙な緊張感を味わいながら木戸で2700円払って中に。すでに10人くらいお客さんがいる。ホッとして椅子席に。1対1の落語というのは、客は緊張するだろうな、うかうか寝てられやしない、などと考えながら、開演を待つ。プログラムで出演者を数える。落語家、奇術、曲芸、漫才、紙切り 合計18組も出る。入場料と客の数をつい掛けてしまう。その他に、お囃子、受付や会場係もいる。笑いに来た客に開演前に、これだけ緊張させたり、心配させるんだから、これはもうさすがと言うしか無い。椅子も昔のままだ。
定刻10分前に突然 出囃子が鳴って、幕が開く。前座さんの登場だ。話の途中で客が入ってくる。桟敷の客はゴソゴソ音を立てながら弁当を出して食べはじめた。ここまでは、寄席なら珍しくもないが、この日は、建物を修繕していて、時折工具の機械音や、鎚の音が聞こえてくる。こりゃいけません。話が面白くなってきた時に、ウィンーン、トントン、しかも遠慮がちなのが、かえっていけません。客がどっと笑った時を狙って音を立てる。これは客だけでなく、当然噺家も気にする。二つ目あたりまでは、「これも若手芸人に与えられた試練でしょう。」てな事を言って笑いをとっていたが、真打ちになると、その洒落は通じない。「芸がうまけりゃ、気にする人はいないんでしょうが、これも私の芸がだらしないからで・・」いいえ、どんなに上手くてもこの日の騒音では落語は無理です。工事の音を、気にしないのは曲芸、手品、紙切り。お客さんからリクエストを貰い、白い紙と鋏一本で、身体をくねらせながら、切り刻んでいく。お題は「巨人 松井」お囃子もリクエストに合わせて雰囲気を作る。お客さんにリクエストを貰いながらする芸は沢山あるが、この日は珍しい人が出ていた。物売りの声、宮田章司さん。何方かの代演だそうで、プログラムには載っていなかったが、客席はわいた。年配のお客さんが多いせいもあって、リクエストも金魚売り 屑屋 豆腐屋から、蚊帳売りのかけ声まで、懐かしいものから 知らない物まで。仲入り前に春風亭柳昇師匠。現役最高齢噺家、十数年前に見た時よりお痩せになっていたが、同じ話だった。時折宇宙空間のような間があったり、同じ事を2度言ったり、客をハラハラさせるが、可笑しい。やはり笑ってしまう。名人に、工事の音も忘れて笑わせて貰った。

スタニスラフスキーシステム

スタニスラフスキーシステムによるワークショップの発表会があると言うので見に行った。嘗るように「俳優修業」を読んで、エチュードを繰り返した昔の記憶が懐かしく蘇った。
「泣きなさい」と言うエチュードで、本当の涙を流すだけで満足してしまう人がいるが、その役が何故涙したのかを表現しなければ、悲しみや喜びは、見ている人に伝わらない。
演じる役の形象からではなく、内面から役を作り上げる、その人物は何故そこに存在するのか?その役の生い立ちから創造していく。髪を白くして、顔に皺を描き、喉を絞って台詞をしゃべっただけでは、老人の真似をしたにすぎないのだ。俳優全員がこのシステムを実践して、舞台は成立する。このシステムで、お客さんを満足させるには、完成度の高い脚本と演出、肉体的にも鍛錬された俳優の存在が不可欠なのは言うまでもない。
今回の発表会は、お客を満足させるのが、目的ではなく、スタニスラフスキーシステムを学んでいる課程を見せるためのものなのだが、私は満足した。
まず驚いたのは、俳優達の声が聞こえないことだ。と言うより聞かせようなどとは、誰も考えていないことに衝撃を受けた。ほとんど聞こえない人もいた。プロの俳優としては失格だが、そもそも大きな声で台詞を言おうとする意識そのものが、不自然だ。言葉には本来の意味がある。正確に発音してあげれば、意味は伝わる。しかし「大きな声で」を意識してその言葉を発すれば、その意識もお客には伝わってしまう。だから意識せずにお客に届く声が自然に出せるように鍛錬してない人は、舞台には上がれない。これもシステムに組み込まれている。
今回は 俳優の卵達による発表会だったが、見ていて気がついたことがある。
、舞台を完成させるには、お客さんの参加が必要だ。この舞台を見た人は、自分の耳を集音マイクのようにすることで、いつの間にか、想像力を掻きたてられ舞台に参加していった。聞こえなければ、聞こうと努力する、説明的に押し付けてくるような演技だと、想像力が萎え 退いてしまうこともある。
もう一つ驚いたのは、俳優達の台詞が自然なことだ。「語座」での私の課題の一つでもある「自然な抑揚」で、しゃべっていたことだ。チェーホフの翻訳台本 演出はロシア人演じるのは 若い俳優 これだけ条件が揃えば、不自然な抑揚が機関砲のように飛び出ても不思議ではないのだが、ほとんど気にならなかった。

円熟を拒否するおやじたち

「円熟」を拒否したおやじたち。
パパセンプリチータ シティーボーイズライブ
アートスフィアでシティーボーイズライブをみた。ジャンジャンからスタートして23年!「円熟」する事を拒否したおやじたち。笑った後でふと虚ろな気持ちになるのは、腹の周りだけ熟してしまった自分を感じるからか。
しかし冷静に考えてみると、俳優タレント「語り手」もそうだが、どんなベテランでも、一流と言われる人の芸が熟することはない。特にお笑いではそうだ。円熟した落語家なんて、笑えない。芸人は、鮨と違って、「うまい」と言われたらお仕舞いだ。
その点シティーボーイズは安心して笑える。
命を危険にさらしていることが前提のサーカスでも、同じだ。「ガネ」と言う綱渡り芸がある。サーカスでは、1メートル程の高さにワイヤーを張って練習するが、渡れるまでに3年かかると言われていた。若手芸人は初舞台を夢見てただひたすら一本の線の上を歩く。でもただ渡れるだけでは、お客さんは拍手してくれない。ワイヤーの上で縄跳びをするとか、トンボをきるとか、それが出来たらさらに、ワイヤーの高さを上げるとか、栄養ドリンクのコマーシャルのように、エスカレートしていく。熟してる暇はない。
生で見たのは数年ぶりだが、見るたびに思うのは、ネットワークの凄さだ。脚本 美術 音楽 衣装 どんなに才能があっても俳優だけではなにも出来ない。回を重ねるごとに一流のクリエイターが集まってくる。スライドでぼんやりとしか見えなかった、映像部分も、それだけで十分楽しめるようになった。
一つ心配なのは、お客が円熟してきているのではないかと言うことだ。しかしこれも計算されているようだ。仕事だけしているとつい見えなくなるが、お客と闘わなくては勝てない。齢は 熟してきたが、このライブを続ける限り、三人が老化することはないだろう。

ブランド

池田秀一 林原めぐみさんが主役を吹き替え、野島昭生 水谷優子と松本保典などが出演。アニメ人気あやかりキャスティングのようだが、皆さん筋金入りの演技派。池田さんはアニメではガンダムで人気に火がついたが、芸歴はご存じの通りだ。自身がブランドであるためには、どんな状況でも透明度を保たなければならない。俳優としての日常の過ごし方、精神のコントロール、生き方すべて見習いたいと思うのだが、悲しいかな凡人の私には、まねできない点が多すぎる。

林原めぐみさんは秋葉原電脳組で一緒だったが、彼女のせりふには、どきっとさせられることが多い。その場限り 使い捨てられる人気者が多いアニメの声優だが、ビルが建つほどの人気の秘密がそこにある。

親子丼

VPの仕事。不況の影響か、少なくなった。テレビ番組の大手制作会社でもその部門は縮小され、スタッフは異動してしまった。残ったのは 医学関係、法律関係 どれも専門用語ばかりの難度の高い仕事。以前は会社紹介や 社員教育 各種マニュアルなどが主だったが、高いナレーション技術の要求される物ばかりになった。メディアもVTRからWEBや、CDROM DVDなどに移ってきている。それに伴い原稿量も増えた。

前の仕事が早く終わり、お昼に時間が空いたので、少し歩いて人形町の「玉秀」に行った。テレビ 雑誌で紹介され 親子丼が人気の料理店。ランチは11:30からだが、すでに20人程の行列、覚悟を決めて最後尾についた。前に並んでいるのは、関西から来たらしい家族連れ、後ろのグループも、関東近県から来たようだ。すっかり観光ルートになっている。30程待ってやっと店内へ、下足を預けてお座敷にあがると、そこでまた行列。食券を買って待つ。注文はもちろん「元祖親子丼」
10分ほどで席に案内された。年輩の紳士と相席、軽く挨拶しお茶を飲みながら、じっと親子丼を待つ。隣に4人の若者が案内された。そして、ついに料理が運ばれてきた。全員の目がどんぶりの蓋に注がれる。そっと開けると、全員の口から「おぉ~」という音にならない吹き出しが見えたような・・・この瞬間待たされた事に納得した。見るからにおいしそうなのだ。全員無言で食べた。人間おいしい物をいただいた時は幸せな気持ちになる。料理人は、その顔を見るのが、何よりの喜びだろう。
私たちの仕事は 料理人と同じ立場だ。仕事を終えブースから出た時、スタッフやクライアントの表情ですべてが判る。どんな食材であっても、おいしい料理を作り続けなければならない。9月にいよいよ「KATARI座」がスタートする。舞台の場合は、お客さんが目の前に居るのだから、判定は更に厳しい。詳しくは別の機会に書くが、豪華なメインディッシュを引き立てる前菜が、美味しく出来るか、これが問題だ。

タイチャン

仕事が終わって、プロデューサーに一杯ごちそうになった。その席で、「語り」について話を交わした。麦人さんは殿山泰司の自伝を脚色した「タイチャン」をロングラン上演中。月一度の公演もあと2回で、ひとまず終わる。まだ見ていない人は是非ご覧ください。麦人さんのホームページに詳しい情報があります。

「タイチャン」は、「1人芝居」に近いスタイルだ。お酒を飲みながら様々な思いを語る殿山泰司さんを、麦人さんが演じる。それはタイチャンの姿をした麦人さん自身だ。 入り口で接客をしていた麦人さんが、そのまま舞台に上がり、ついたての裏でサングラスをかけて登場する。そこから語りがはじまる。サングラスが異空間への入り口であり、合図でもある。お仕舞いまで「素の麦人さん」に戻ることはない。落語や 講談とも違うし、坂本長利さんの「土佐源氏」などともまた違う、独特のスタイルだ。回を重ねるごとにますます面白くなっていく、お客が参加して、作品が完成していくのだと見るたびに感じる。放送は、お客の参加が無い。そのせいか、独りよがりになりがちだ。