虚実皮膜
麦人さんの独演がDVD化され発売されるそうです。
その中に挿入される「レモン哀歌」「すずめ」を聞かせて貰いました。
ニュース番組などの仕事をするようになって、一番感じたのは事実の重みです。早朝の番組に関わっていた時、ある大事故が起こりました。それまでのスタジオの雰囲気は一変、怒鳴り声が飛び交い、記者は別人の形相で、原稿を書いていました。ヒマネタと言われる私たちの小さなコーナーは飛ばされ、戦場と化したスタジオの隅で、番組の終るのをじっと待つしかありませんでした。たった数分のニュース原稿ですが、その陰で何人もの記者や取材クルーが、命がけで取材しているのを、この時改めて知りました。ある記者は、100取材して原稿になるのはせいぜい10だと言ってました。ニュースキャスターはそれを、まるで自分が見てきたように見事に読み伝えます。読む技術だけでなく 常日頃から学習し 取材しているのは言うまでもありません。でも これは10の原稿に対する100の取材を信頼しているから出来る事です。もし出鱈目捏造記事だと疑ったら、1行も読めないでしょう。
ドラマの場合、どんな出来事も すべて虚です。真実の重みを伝える映像もありません。見終わった観客に 感銘を与えるには 記者が命がけで取材する以上の奥深い役作りが必要です。お客さんに伝えられるのはやはり氷山の一角でしかないのですから。
聞き終え、事実の重み以上の感銘を受け、海中に沈む見えない氷塊の大きさを感じました。
「虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、この間に慰が有るもの也」